コーヒー問答



 




コーヒー豆がなくなる。

いつも、下北沢のコフィアエクスリブリスで買うのだけど、出かける隙もなく、どうしたものかと悩んでいた。

ふと通りかかったコーヒー屋の、店先にあるメニューを見ていると、中から店員の方が話しかけてくる。

中で作業をしながら外にいる私に話しているものだから、とにかく大きな声で、矢継ぎ早におすすめのコーヒー豆について話している。

豆を売っているのだからそりゃそうなのだけど、買うかどうかすら迷っていたがために、そのあまりの大きさと早さに参ってしまう。

何よりわたしは、本当はコフィアで買いたいのだ。

「ああ、何かに負けそう」と思った私は、なんとか「私」を取り戻そうと思うあまり
ものすごく能動的に「エルサルバドルの豆がいいです!」と店内まで届く大きな声で言った。


最近はそのコーヒーを淹れて飲んでいる。

ふいに、昔コールセンターで発信業務をしていた時の、とにかく相手が喋る間も無く喋り続けなさいという教えを思い出して、切なくなる。


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今年に入ってから、出かける時も、家でコーヒーを淹れていくようになった。

ささやかな節約のつもりだけど、本当はいい豆で淹れているので、コンビニで買うよりも高いかもしれない。

でも、ちょろちょろと出費しないことと、ついでに何か買っちゃう機会がなくなること、何より美味しくて満足することにより、そうしている。


その朝は、コーヒーを飲まなくてもいいかと思った朝だった。

しかし、買わなくてはならないものがあるのを思い出し、道すがら、久々にいつも行っていたコンビニに行った。

レジに行くと、以前いつも対応してくれていた店員の方が、わたしを見るなり無言でコーヒーの紙カップを出した。

2ヶ月ぶりくらいだというのに、だ。

マスター!!と思わず心の中で叫ぶと、向こうもこくりと静かに頷くもので、飲まなくてもいいかと思っていたはずのコーヒーを買った。




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来週、2/28(水)に、またまた『紙芝ゐ』に参加することになりました。


今回は、飯野雅彦さんとのツーマンです。

私は前回につづき、長編ちぎり絵紙芝居の続きをお送りします。

平日ですが、よろしければ。

これを見にいらしても、なんと今年は、2月があと1日あります。