そうそう。12時間寝たとき、夢をみた。

家に帰ってきたのだが、自分の家の玄関の前だけ地面がない夢。

その響きだけ聞けば悪夢のようだが、不思議と不穏な気持ちはなく、落ち着いて地面のあるぎりぎりまで足を踏み込み覗き込むと、むこう側に階段があり、むこう側からならなんとか家へ入れるようになっていた。

すごく象徴的っぽい夢だけど、別になんにも象徴してくれなくて大丈夫。

なんか面白い夢だったから。



川上弘美さんは、いつも日記で、見た夢の話をしてくれる。

してくれるって、別に、夢の話を書いてあるだけなのだけれど、夢ってすごく無防備だから、夢の話を書いてあると、しょぼしょぼとした無防備なところを見せてもらった気になるのだ。

川上弘美さんの小説は、いつも無敵に面白い。

だから、この人も、当たり前に人で、夢から覚めた瞬間は、あの現実に産まれ直したてみたいなしょぼしょぼの状態になるんだなぁと思うと、なんだかほっとする。

『某』を読んだ。

とてもよかった。かなりよかった。

夢の話を書いてくれているそのしょぼしょぼさと、なんだかとてもつながった。

無敵に面白かったけれど、無敵なのは川上さんじゃなくて、私の欲していることも、欲したことのないことも、欲することができるなんて思ってもいなかったことも触れてくるというその点においてだった。

欲していることも、欲したことのないことも、欲することができるなんて思ってもいなかったことも触れてくる、まるで眠る時に見る夢みたいな

その無防備なばかりの、無敵さ…ではなく、無秩序さのようなものに、私は感応してきたのかもしれないのだった。




『某』を読みながら、思い出していた歌。