ローリエ



ある日、畑の友に、葉っぱのにおいをかがされた。

「なんだと思う?」

すごく覚えがあるようで、その覚えを一点につかもうとするとかえって逃げる。

「なんでしたっけ、すごく知ってる」

この葉っぱの姿からはかけ離れていて言葉にも出せないが、梅ガムの、梅の香料によく似ていた。

でもやっぱりそれは違うに違いないから、言えなかった。

「ローリエだよ」

畑の友は言った。

ああ、ローリエか、言われてみれば。

モヤモヤとしたイメージの前景にあった梅ガムの香料はぐんと後ろにさがり、たしかに言われてみればあったローリエの成分が前景化した。

ローリエそのものだって言ってるんだから、それが全景なんだけど。

お裾分けいただき、言われるまま、しばらく窓際に吊るして、いいなぁとながめながら過ごし、めでたく乾燥したので袋にしまった。

クリスマスのごはんに活躍するだろう。


ところで、夏中と秋にかけて本当に恩を受けた茄子とおくらを、いよいよ土から引っこ抜いた。

しっかりしっかり根が張っていて、たいへん力がいったので腕がびっくりするくらい筋肉痛。

腕に宿る痛みに、ああ生命、とおもったりおもわなかったりする。