その時が来れば

読みたい本が書店に置いてなく、店員さんに聞く。

小さな出版社さんの本だから、どんぶらこっこしてくるとのことで
「ひと月ほどかかってしまいますが」とおっしゃる。

読むべき本も、読みたい本もすでにたくさん家にあるので
ぜんぜんかまわない。

急ぎませんので、大丈夫です〜
と言って、名前と電話番号を伝えた。

互いに急いでない顔で、ちょっと会話した。


急ぎませんので〜ということを、よく他人に伝えるようになった。

多分、私が急げないから人に急ぐことを求めないだけ。

自分に急ぐことを求めると、向いてないので大抵失敗すると学んだ。

郵便屋さんで。券売機で。レジで。

急ぎませんので〜というと、余計な話も、二言三言できる。

余計なことばかりしていたい。


祖父母の家から救出してきた
一度も使われていなかった鉄瓶。

何十年前のものなのだろう。

救出したはいいものの、めんどうくさくって私も家に放置してた。

ふいに、今だなあと思い
錆を取って使えるようになるかなあと手入れした。

お茶っ葉を炊いて放置したら、簡単に錆が取れた!

簡単に、使えるものになった!

白湯が美味しい。コーヒーも美味しい。

これはいいぞ、と、そそくさ電気ケトルを磨いてからしまった。

何十年この時を待っていたんだろう、この鉄瓶。


家の中で時を待っているものたちを
順番になんとかしている。

捨てたり、手入れしたり

どちらにせよ、思い入れのあるものだけがある部屋にしたいなあと思う。

思い入れのある、余計なものが、
たくさんあってもいい。

私の暮らしは丁寧じゃないけど、
いくらさかのぼってもいいから、
気がかりや、よどみのある場所を無くしていきたいなあとは思うこの数年。

自分の心や身体に対して思っていることと、同じことだな。



なんか、ぐだぐだしてたら
ほうじ茶と生姜のスコーンが焼けた。

おもいがけず、とてもおいしい。

おもうようにすすまなくても
おもいもよらないことは、すすむものだな。

そんでいつのまにか、
おもってたこともすすんでるんだとおもう。

だから全然、急ぎませんので〜となるのである。