からだから

はたちをすぎた頃は、自分の生活にいっぱいいっぱいで選挙に行こうと思えませんでした。

「自分のことで精一杯なのに、国のことなんて考えられないですよ〜」って
サークルのスタジオ練習の時に、先輩に言った瞬間のことをとてもよく覚えています。

その時の自分の顔の筋肉の感じとか、スタジオのロビーの景色とか、先輩の顔とか。

多分強い罪悪感があったから焼き付いてるんだろうと思う。

それはまったく嘘ではなかったし
何より、自分が精一杯であることは、自分自身でなんとかしなければならないと思っていたから出た言葉だったんだと思います。

ひたすら自立しないと、と思っていたし
自分にかかるお金は全て自分で稼がないと、思っていた時期でした。

自分を自分で生活させられなければ、意見してはならないと思っていた時期でした。

でも今は、良くも悪くも、自分は1人では生きていなくて、世界はどうしようもなくつながっていることを知りました。

自分のせいだ、自分でなんとかしなければと思っていたことを
ほんの少し手繰り寄せただけで、そこに「政治」があることを知りました。

若さもあったけれど、生活に窮していると視野がどんどん狭くなっていくし
(スタジオに行くお金はあったんかい、と思うけれど、それは生きる楽しみだから必要だったんです)

知ろうとする気力がなくなることもあります。

後ろめたさって、人を動けなくさせるんだよなあ。

どんなきっかけがあって選挙に行くようになったのかは、はっきりと覚えていなくって

最初に行った時は、わかんないけど投票しました。

でもそれからなんとなく、後ろめたさがまず取り払われて

参加してもいいんだよね、と思うようになった。

そうしているうちに血が少し巡って、どうしようもなく自分が社会の一部であることを受け入れたんだと思います。

そのどうしようもなさに苦しむこともあるけど、助けられることもあるんだなと思ってます。

選挙に行けるようになってよかった。

お芝居をやるとき、感情がついてこなかったらまず身体から動かしたりします。

怒れなかったら、まず呼吸を荒くしてみる。
そうすると身体が怒ってきて、怒った言葉が出るようになります。

ちょっとそれを思い出しました。

わからなくて、頭も心も追いつかなくても、まず行ってみるとわかるようになることがありました。

そんなわけで、いっこうにわからないことだらけなのですが
後ろめたさなんてなくして
気になったときから知ればいいじゃんって思ってます。

あとけっこう、みんないろいろ教えてくれます。