虹の麓


 
家の用事で、鹿児島へ行っていた。

行く、なのか、帰る、なのか。

わたしは育った町ではないけれど

血が流れている土地であることを十二分に感じて

ああ、還ってきた
という感覚があった。



家族、というものを久々に見つめていた。

とてもとてもたくさんのことを感じて

一人でいるよりずっと頭も心も忙しかったけど

それは血の距離や、交わりを感じる出来事でもあって

家族がいることを、とても尊くおもった。



御墓参りをしてきたのだけれど

自分と同じ名字の刻まれたお墓をみつめた

そのときの感じ、は、とても新鮮で

あらためて自分の名を知ったように思った。

自分の源流を見つめる時間は

言葉にならない感慨深さがあるようだ。

それは、生まれてきたことをあらためて
受け入れるような時間でもあって

今の自分にとても大切な時間だったような気がする。

はじまりを受け止めないと

今もこれからも見つめきれないのかもしれないなあと

終わりを遂げた先祖の碑の背中に、思った。



うれしかった。

素直になれた。

うれしかった。

こどものころより、こどもだった。


初めて、虹の麓を、通った。