あの時

photo by Aoi Momoco



去年の夏頃はずっと

雨宮まみさんの日記を読んでいた。

そのころわたしは、本当に無気力で
どうにもならないような気持ちを抱えていた。

あれはなんだったんだろう、ととぼけながらも

些細なことながらその訳は知っている。

絶望が一番厳しいと思っていたけれど

絶望の先の希望に出会った、そのあとの
なんとも言えない失望がいちばんこたえることを、知った。

他者や、何かに、期待してはならないことくらい知っているのに

どうしていつのまにか

失望するくらいの希望を
どこかによせているんだろう。

いやいや、そんなものだよね。

そういうわけでどうにも気力が湧かなかった頃

たすけになったのは、雨宮まみさんの言葉だった。

それでも淵で生きている、そんな風景がありありと目に浮かぶ

淵で見るきらきらしたあれこれ、ひりひりしたあれこれ。

もうこの世にはいなくなってしまった雨宮さんの
日々の言葉たちにすくわれた。




「絶望の先の希望に出会った、そのあとの
なんとも言えない失望がいちばんこたえることを、知った」ことは

わたしにとってとても大きくて

絶望を希望に、どん底を天井にひっくり返すことしか知らなかったわたしが

両手を広げてやじろべえのように歩く方法を知った。

その時見つけた答えは
「自分が自分に満足でいられるように過ごす」
ということだった。

それからとても、毎日が軽くなった。

自分の時間を、過ごしやすくなった。

きっと、不要な期待をしないこと
必要以上に必要とされたいと思わないこと

その方法を知ったのだと思う。



今、毎日、稽古をしていると
いろんな「あの時」を思い出す。

26年という短い時間ながら
転んでは立ち上がった「あの時」。

今回の物語は
「女優の卵がテロリストになった」その時までのお話です。

「あの時」こうしていれば
もっと違う未来があったのではないか

そんなことをおもいながらも

訪れてしまった「その時」までを
毎日丹念につくっています。

虚構として、客席から覗くことのできるお客さんには

いろんな「あの時」を思い返して

いろんな「あの時」そばにいてくれたひとや
そこに起こったラッキー、
なにより、立ち上がった自分の強さを

抱きしめてもらえたらいいなと

勝手ながら思っています。



オフィス上の空プロデュース
火遊びpray.08
『焔の命ーー女優の卵がテロリストになった理由』
5月9日(水)〜13日(日)
恵比寿エコー劇場
チケット
前売り 4800円
当日 5000円
ご予約はこちら