わからない言葉で歌ってください



わすれてしまった痛覚というのがあって

このひと月は、その痛覚を呼び起こす時間だった。

痛くないほうがよいにきまっているので

わすれてしまって正解なのだけれど

自分の書いたことばを上演するにあたり

呼び起こさなければならない事態にせまられた、という感じだった。

書いているその時すら
その痛みは忘れていて

じゃあなぜ書いたんだろう、書けたんだろう。

わからない。

関森絵美ひとり芝居『けつろ』
明日、千秋楽をむかえます。

今回は、知らぬまのことがたくさんあって

なにかに連れられるようにしてここまで来ました。

わたし自身ですらわすれていた痛覚を
他者に伝えるのは、まあ簡単ではなくて

こんなこと、共有する必要がどこにあるのだろう

と、ふと思ってしまうこともあった。

いちばん大変なのは

それを体現しなければならない関森絵美ちゃんに決まってる。



だけど、伝えるために身体の感覚を呼び起こすにつれ

誰かと共有できたら、たすかるなあ

という感情が湧いて来た。

たすかる。そう。たすかる。

それ以上でも、以下でもない。


「ほんとはおもってる
ちいさなふるふるすることに触れて
死にそうになることと
触れぬようにしてたそれがいつの間にか消えちゃうこと
どっちがほんとにこわいんだろね。」

いつかのわたしが書いたメモである。

きっとその痛覚を思い出したり、忘れたりを繰り返しながら

これからもすごしてゆくんだとおもう。

今回は、関森絵美がいたから

恐るることなく底の底まで潜り

その痛覚を思い出し

今のやすらぎを知りました。

関森絵美の健全な心身に
このどうしようもないことばたちを
ゆだねています。



関森絵美ひとり芝居
『けつろ』
脚本・演出 福永マリカ
1月28日(日)16:00 千秋楽
千歳船橋APOCシアター
チケット 1500円
残席わずかです