ほうこう

ずっと気になっていたことは
ほんの5分で済んだ。

だいたいそういうものなのだと、片付いた瞬間思い出すのに
どうしていつも忘れて不安の中でごろごろしてしまうのやら。

それでも今日は、その安心がうれしくて
なによりそれまでのきょうがうれしくて

景色をゆっくり眺めながら
壮大だなあとつぶやいて帰った。

おいしいごはんと、あんしんするえがお
人の話に涙が出たり
よかったねと心で抱きしめたり
あしたのことをそうぞうしたり

そういう時間に恵まれて
わたしは豊かな今を思った。

知らない街の路地裏の珈琲屋に立つあの女性は
その風景の中で主役だったこと

広島で出会った語り部のおじいさんは
その風景の中で主役だったこと

あの日の美味しいお酒と肴を出してくれた店主は
その風景の中で主役だったこと

今日わたしをあんしんさせてくれたひとたちは
その風景の中で主役だったこと

わたしの中でいきいきと浮き立った
彼、彼女たちのその輪郭は

とても揺るぎなくわたしに焼き付いて

豊かに生きる姿がどれほどになににもかえがたいかを
てにとれるまでおぼえさせてくれる。

豊かに生きるその人たちの
光の層や、日々の層、たくさんの人との時間の層
出会ってきた思いの層、これから待つ彩の層

あらゆるものが彼、彼女らを包み
柔らかく鮮明にまとって

どうにもその景色に
美しく浮き立つ。