しんだいたたいだん

新代田駅前の景色は
もしかすると東京でいちばんすきな景色。

東京で空の広い場所はとてもすくなくて

住宅街にふいにあらわれる広い道とか
こうして抜ける空があると

ついつい足を止めて大きく息を吸う。

六月はこの線路沿いに、とりどりの紫陽花が咲く。

紫陽花はいちばんすきな花。

秋に枯れた紫陽花もすき。

すきだなあとおもってたこの景色は

すきだなあとおもってたアナログフィッシュの『No Rain (No Rainbow)』のMVにもうつっていて

『最近のぼくら』には新代田駅から下北沢駅までの電車内がうつってる。

はじめてアナログフィッシュのライブを観たのも新代田FEVERで

あれは去年のいつごろだったかな。

ものすごくいいライブで
水のなかを泳ぐみたいな時間だったのだけど

そのときわたしはものすごく関係のないことを考えていて

目の前で奏でるアナログフィッシュをまえに

あのひとにいえずにいることをくやんだり、ひらきなおったりをくりかえしていた。

いいライブほど、よけいなことを考えていることがおおくて

それはなんでなんだろう。
よくわかんない。

景色に溶け込むようにからだになじむからなのかしら。

せっかく目の前にあるものが勿体無いし

そんなのいけない気がしてたけど

あまりにいつもそうだから、そういうものなのかもしれない。

あの道を進むとあの子の家があって、とか
あの喫茶があって、とか

進まない道をながめてとおりすぎながらおもうみたいな

そういう感じに少し似てる。