うりかい

しらないひととできる

ゆくすえのないはなしは とてもたのしく

きょうも骨董屋のおじさんと

ゆくすえもないはなしを たしなんだ。

おじさんは

「お茶を買いに行ったのに、
あんまりに気持ちいいから
店先で日向ぼっこして
ついにはお茶を買うのを忘れてきちゃったよ」

というもんだから

「目的を忘れられるなんてさいこうじゃないですか」

とわたしはいった。

はなしながら、

目的のろうそく立て以外に

気にいるゆびわはないかなあとさがしてみたけど

ゆびにしっくりくるものがなかったから

目的どおり、ろうそく立てだけ買った。

「あなたなにしてるの?」

「役者でーす」

「そう、役者の卵かあ」

「そうでーす」

「売れそう?」

「売れちゃうかも!」

「おー、本当に売れそうだ」

120円を払って

売れるらしいわたしはひらひらと去った。