重なり合わなくていい


高校生の頃、
美術を専攻していた。

高校には、
音楽、美術、書道の選択肢があって

音楽をずっとやってきたわたしだったけど
たぶん、だから、

美術を専攻していた。

いちばん最後の課題は
自画像を描く、というものだった。

たしか、鏡をみながら描くのだけど

そうしていると、自分の嫌いなところを描かなくてはならない瞬間がつぎつぎに来て

なるべくなら嘘をついて、
そんな場所無視して描き進めたくて

戦った末に、
やっぱりほんの少し嘘をついた記憶がある。

いまのわたしなら、嘘をつかない気がしてて

たぶんそれは

自分の容姿がある程度どうでもよくなったからだとおもう。

どうでも、よい。という、具合に。

その自画像は、何か好きな背景をつけるのだったとおもうのだけど

そのときわたしは、
縦と横に線を引いて

それらが交わる場所に、色のついた点を描いた。

そんな模様の背景にした記憶があって

きょう稽古中にそのことを思い出して、
台本に描いてみた。

共演の小川紗良ちゃんに

これ何ですか?と聞かれて

うーん、なんだったのかイマイチはっきり思い出せなくて

でもこの背景の模様に一番こだわっていた記憶があって

うまくこたえられなかった。

たぶん

自分と、他人、とか

内と、外、とか

陰と、陽とか

過去と、未来とか

対にあるいろんなことが重なる点に

何かがある気がして

誰にも触れられない部分に、欲しいものがある気がして

それを、自画像、という場所に重ねたくて

描いたんだと、おもう。

星の光もきっと、そうやって

重なった点にできているんじゃないかなっておもって

それで、思い出したんだった。



superendroller
『monster&moonstar』
3/24-28 at VACANT原宿