うみの、かおり

水のかおりがとてもすき。

海とか、雨とか、

なみだのかおりも、かぐと、なんだかほっとする。

ふしぎ。

昨日は雨のなか、たくさん泣いた。

はじめはほほえんで観ていたのに、右目からなみだがながれてて

だんだん顔をゆがめてないてた。

BASEプロデュース
『向日葵と夕凪』

ちいさなBARでの、四人だけの、しずかなお芝居。

顔の筋肉のうごきひとつをとっても、
こころの機微がよくみえて

そのたくさんのとめどない情報が
秋のすき間にそそぎこんだ。

出演していたのは、先日『鵺が、』でご一緒した生見司織さん。

ぴたっとゆるがないようなその瞳のなかが
かすかに
電磁波くらいのちいささで
ぴりりりり、とうごくのが感じられてたまらなかった。

生見さんの、横顔がだいすき。

きれいですっとした鼻筋と
チャーミングなえくぼが

つめたくてあたたかくて
つよくてやさしくて、だいすき。

そしてもうひとり、
大学時代の同期、安川まりさんも出演してた。


まりちゃんは、大学に入学したてのわたしに
初めてと言っていいくらいのタイミングで声をかけてくれたともだち。

あの日のあの瞬間はわすれない。

役者さんで、たくさん活躍していることもずっと知ってた。

同じ学部で
彼女は演劇学専攻
わたしは文芸メディア専攻

本気で演劇をやっているまりちゃんや、演劇学専攻のともだちをみて
わたしは自分が語る職業の名を恥じた。

わたしは自分のこと、役者って言えるかな。

ずっとずっとなやんで
でもまりちゃんたちがいたから、みつめられて
わたしはいま、自分のこと、
役者って言えるようになった。

そんなまりちゃんの出演した作品は、ほんのわずかしかみたことがなかった。

ひさびさの再会、
物語のなかにいるまりちゃんをみて

ああ、ほんとうにすてきだなあ、とおもった。

まりちゃんの、音がだいすき。

生きてきた年齢とは、すこしちがうところについた年輪みたいなものをかんじる

奥行き深い音。

今回の役どころに、その奥行きが、ぴったりだった。



生きてゆく
出会ってゆく
わかれてゆく

それは呼気とか、花が開くとか、

そんな、聞こえるか聞こえないかくらいのかすかな音、空気のうごきしかうみださなくて

だけどたしかに、1秒前とはちがってる。

そんなかすかな音に耳をすませたくなる

あなたの声をちゃんと聞きたい。
そしてわたしの声も、ちゃんと。

素直になれるひとときに

おもいだしても泣けてきちゃうな。

出会えてよかった、

また会えて、よかった。


BASEプロデュース
『向日葵と夕凪』
渋谷 松濤BASE BARにて、9/22まで。
そのあとは神戸公演もあるようです。
ほんとうに、ぜひ。