ひとでなし

写真 橋本恵一郎

とっても悪夢を見た。

夢の中

信じられないくらいのショックな事態の中

頭の一部はひんやり冷静に

いま、わたしが、こう振る舞うと、こうなる

ということを考えていることに失望した。

だけど案外そんなもんなのかも。

次の瞬間を生きなきゃいけないってことは、
そういうことなのかも。

ちょっとがっかりだけど
なんかしっくり。

夢から覚めたら普通の暮らしでよかった。

朝のホームは人が人を押しのけて歩いていて

人を人と思ってないようにも見えた。

人が、人を、人と捉えなくなるとき

人と人として、交わらなくなるとき。

だから満員電車のあの距離を、何の気なしに過ごせたりもするわけだけど。

だれが「ここからは人と人」だよとか

「ここは個人の世界だよ」とか線を引いたわけでもなしに

なんだかふしぎだなあ、とおもった。

人が、人でなく、

単なる数みたいになる瞬間。
ぷつぷつの塊になる瞬間。

ひとり、ひとりを、ひととして認識してたらたまんない世界だってこと。

ぷつぷつの塊になってもらう必要のあること。

そういう時間が、ひとをおもう時間にきちんと運んでくれるのかなあ

と、帰宅ラッシュの電車の中で、おもった。