しんじゅくの、しん

新宿、という名のせいで、ツルッと流されてしまっていた私のなかでの新宿。

人も多いしどこにでもあるものもおおいし、そんなもののなかでツルッと流れていくだけの街かとおもってた。

だけど、このまえ出会った。

手触りのある、新宿。

新宿末廣亭での落語は、ひしめき合うひとをみてうれしくなった。

落語をみて、聞いて、手を叩いて、笑って。
全身に血がめぐっていくのをぐんぐんとかんじて、あたたまる頬がまたきゅっとあがった。

落語家のかたの目だけみていれば、そこに広がる世界が映って見えて

立体的にたちあがる感覚がたくさんあって、うわあ!と声を出すほど感動した。

通いたい、末廣亭。
通わせたい、この鈍き血行。

夜にはお酒を飲んだのだけれど、これまた本当に素敵なお店で、ちょっと黙っておきたい、そんなお店。

幼き頃にはじめてきた新宿、のにおいと、少し似たにおいを、おもいだした。



新宿って、ちょっとざわつく手触りがあって

だけどすぽっとはいってしまえばあたたかい。

そんなところなのかも。

ツルッとした表面のうえを滑って通り過ぎてたな、新宿。

あたたかいものがめぐるところに、また会えたな、新宿。