デパートでコスメを買う(初)

 

いいなあと思っていたコスメブランドがデパートにポップアップでやってくるというので買いに行った。

普段ほとんどメイクをしないために、なかなかメイクの知識も身につかない。

知らないから苦手で、いい歳をしてそんなふうであることにうしろめたささえあった。

しかし、このところメイクをすることに興味を持ち始めた。

というか、興味を持ったっていいよね、わからなくたって、とようやく思い始めた。

いいと思う雰囲気の人をインスタグラムで見つけて、その人が利用しているコスメティックブランドを調べてみた。

それで見つけたブランドが、デパートにやってきたのだった。

実のところ、美容院さえ苦手で、自分の顔や髪を他人と共に見つめることにはかなり緊張してしまう。

だからこそ、なんでもないですよみたいな顔をしてそつなく会話するのだけど、なんだかもうそれも疲れたので、素直に相談することを心に決めて売り場へ突入した。

声をかけてくれたお姉さんに、普段はメイクをほとんどしないこと、何からしたらいいかわからないこと、目指したい印象を伝えると、「えー、楽しいですね。わたしも普段あんまりメイクしないんですけど」と言いながら、おすすめのコスメをさまざまに紹介してくれた。

眉毛マスカラを、「試してみますか?」と言って塗ってくれる。

なんだかもう、小学生が中学生の友達のお姉ちゃんにメイクしてもらってるみたいなすごく淡い気持ちになったのだが、おそらくその彼女はわたしより年下である。

「どうですかー?」と仕上がりに鏡を見せてくれると、ほんのささいなことでかなり印象が変わっていることに心底うきうきが湧き上がってきてしまい、抑えても口角がによによと上がってきてしまうのであった。

それでも30代の意地で、「ベースメイクはふだんどうしてますか?」などと聞くことで知的欲求を前に押し出し、によによを抑え込んで溢れる前に、お勧めされた品々を買って退散した。

退散して、すぐに使ってみたくてたまらず、デパートの化粧室へ向かった。化粧室と呼ぶのがこんなにピンとくるのは初めてかもしれない。

パッと顔を鏡へ向けると、チークは試していないはずなのに頬がきれいに紅潮しており、うちなるときめきとはなんとてきめんなのだろうかと思った。

楽しみの枝葉が増えるのは、とても嬉しいことである。


今日は成人の日ですね。おめでとうございます。
一斉におとずれる節目を祝いつつ、自分だけに時々におとずれるタイミングを楽しんで、人生を謳歌してください。わたしもそうします。

驚くべきことに、今回の記事に添えます写真は、化粧をした顔ではなく、美味しかったタコです。