私にとどまっている
昨年のある時期、栄養不足かなにかによって、手の爪が恐ろしく傷んでいた。
爪の半分から下が、異素材のようになっていて、
その異素材の層がぐんぐん上に上がっていくのをずっと見守っていた。
健やかなご飯を食べながら。
今年に入り、異素材の層がついに、天に旅立っていった。
ピンク色のつやっとした一面が、10枚揃った。
全身のたんぱく質の作用はもちろん繋がっていて
昨年のその頃は、顔の皮膚も、ざわざわふつふつ、気配が下に眠っていた。
そんな最中、姉から、いい洗顔料を教えてもらった。
スクラブのタイプで、肌の生まれ変わりを早めてくれる。
これは、下に眠る気配たちにいいぞと、ぐんぐん毎日使った。
するとある朝、気配だったところに、ぽつんぽつんとニキビが芽生えた。
「やったあ!デビューした!」
おもわず、めでたくなった。
陽の目を見るような、なにか新しいステージにきたような
そんな気持ちになった。
ニキビに対して、地表に表れることを喜ばしく思うのは初めてのことだった。
応援していたから、嬉しかった。
餅を焼く図。
美術館の中庭にある彫刻みたい。
今日は節分。
旅立った爪や、芽生えたニキビに思いをはせつつ
ぱっきりとではない、じんわり巡る節を思う。