明日のハナコの明日

 

気もそぞろ、そぞろ歩きでもなんとか桜をつかまえたいと、日々にしがみついていた時が過ぎ去り、気がつけばハナミズキが空を向いております。

先週末、なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会『明日のハナコ』の上演が行われ、無事に終了しました。

お越しいただいたかた、応援くださったかた、本当にありがとうございました。

目に見えないやり取りの中でほうむられてしまった作品だからか、こうして、実際にお客さまに見てもらうことができて、この作品を、この出来事を知ってくれた方としっかりお目にかかれたことが嬉しかったです。

この「目に見えた」ことは、本当は福井農林高校演劇部のみなさまに見て欲しい光景であって、聞いて欲しい拍手でした。

上演後のささやか座談会でもお話ししたのですが、私は今回参加を決めた時からずっと、福井農林高校演劇部のひとりひとりが、今どんな気持ちで過ごしているのか、それが一番気にかかっていることでした。

(変えなくてはならないのは、もちろんその周囲のことだけれど。)

お顔を見たこともなく、お声を聞いたこともなく、お話ししたことも、肝心の上演を見たこともなく(それはこの出来事が起きたからなのですが)、

どうしてもうまく想像ができなかったんです。

想像だけで進んでいくことの不安もありました。

これは私の頑固な性分のせいです。

それなのに、この作品を自分自身が上演したいことの一番強い理由は、福井農林高校演劇部のみなさまが感じてしまっているかもしれない無力さや空虚さを、すこしでも「そんなことない」と思ってくれたらいいな

それと、大人ってちゃんと真っ向からかっこわるいって思ってもらえたらいいなと思ったからでした。

私って勝手です、本当に。


『明日のハナコ』は演じてみて、すごく難しい作品でした。

見ている分には、とてもわかりやすくてチャーミングで面白いのに、やってみるとすごく難しい。

幾重にも考える必要があって、瞬時に演じ分ける必要も、そうでなく、ぐわっと継ぎ目のないように移り変わる必要もあった気がします。

これは福井に住んでいない、東京都の30歳の私だから、というところもあるかもしれません。

でも、福井に住んでいる、福井農林高校の高校生だから感じる難しさもたくさんあるだろうなと思いました。

この作品を立ち上げ実現したこと、本当に素晴らしいと思います。心から尊敬しています。



大人ってなんのことなのか、高校生の頃から、今もわかりませんが
それでも責任を持って自分のことを大人と呼ぶならば

大人になればなるほど、自分が汗をかいていかないといけないなと思いました。

誰かに指先で指示するなら、口先で教えを説くなら、全身を使って汗をかいて恥もかいて、身を以て伝えられるようにありたいなと思いました。

そうじゃなきゃ、説得力がないし、
それだけじゃなくて、自分自身も気がついたら、簡単に踏ん反り返ってしまいそうだから。

自省して矮小化してはならないと思いながらも、まずはそれが、今の実感です。

人を変えることや、「世界を変える」ことは難しくても、自分を変えようとし続けることはできて

いや、自分を変えようとし続けることだってとてもとても難しいことなのだけど、きっとそこからなら始められるといつも思います。

そして「変わらなきゃなあ」と思えたのは、いつもそばにいてくれた人が気づかせてくれたからなので、きっと「自分を変える」ってことは、すでに自分だけのことじゃないのだとも思っています。

その先には、「世界を変える」ことも続いているのだと信じています。

『明日のハナコ』の高校生2人も、怒りながらも嘆きながらも信じていたから、私も信じます。

「微力だけど無力じゃない」と、発起人の指絵さんが言ってくださったことを、とても大切に思っています。


私たちの公演はひとまず終わりましたが、引き続き、『明日のハナコ』が広がっていくことを願い、自分のできることをやっていきます。

福井の高校演劇から表現の自由を失わせないための『明日のハナコ』上演実行委員会サイトでは、『明日のハナコ』の今を知ることができます。

https://ashitanohanako1108.wixsite.com/home

ぜひ、チェックしてみてください。

上演に当たって、実行委員会の玉村徹さんと鈴江俊郎さんとメールでやり取りさせていただいたのですが、いつもユーモアと優しさにあふれていて、とても元気をいただきました。

明日がある、と思えました。

心から感謝しております。

最後に改めて、劇場まで足を運んでくださったこと、心を動かしてくださったこと、頭を動かして考えてくださっていること、私が言うのもおこがましいことですが、本当にありがとうございます。

こうしたささやかでたしかな希望をつないで、日々をなんとか乗り越えていけますように。

お互い代わる代わるに休息しながら、時々がんばれますように。

少しでもいい明日になっていきますように。