真剣


昔も書いたことがあるけれど
20歳になる前、カレー屋で働いていた頃
ビールも提供しなくてはならなかったのだけど、その注ぎ方が全くわからなかった。

その「わからなさ」というのは、サーバーの操作の仕方とか、金色の部分と泡を何対何にすればいいのかわからないとか、そういうことじゃない。

何を目指せばいいのかがちっともわからないということだ。

20歳になり、ビールを飲めるようになると
その「わからなさ」が瞬く間に消えた。

うまいビールが、飲みたいビールが、想像できるからだ。

自分が注いで「うまそうだ!」と思えればいい。

それだけのことだ。
それだけのことが、とても大きなことだった。

土井善晴さんが、七草粥のレシピの動画で、お粥に乗せるお餅を焼きながら
「自分の食べたいお餅を想像しながら焼くんですわ」というようなことを言っていた。

まさに、このことだなと思った。

最近の私には、食べたいそれがたくさんある。

だから前よりは美味しそうにご飯を作れるようになった。

何しろ、こちとら、食べることへの真剣さが違うのだ。

先日、アップルパイを焼いてみたら、一度目は初めてのことで味に集中していて湯気まで美味しかったのに

二度目は映画を見ていて散漫で、さほど美味しくなかった。

作る人と食べる人(作る私と食べる私)が、一皿を真剣にのぞきこむと、美味しいものは、より美味しい。




さて、本来わたしが真剣にやるべき仕事のおしらせです。

舞台『中島鉄砲火薬店』のディレイ配信が
なんと明日までとなってしまいました。

DVDでの販売は致しませんので、これが最後の機会です。

とても好きな作品です。
みてくれるひとに、楽しんでほしいなと、真剣におもって作られています。

是非お見逃しなく。

そして、その先に、またこの作品を劇場でできる日を夢みたいなと思います。