『夜会行』

 鵺的『夜会行』
7月7日に、無事、全員で全公演を終えました。

お越しいただいたかた、
応援くださったかた、
本当にありがとうございました。

今月末に無観客収録した本作の配信を控えているので、まだ道の途中ではありますが
ひとまず、劇場での公演が全て行えたことに安堵しています。

このような日々不安定な状況下で、全員揃って全公演を遂げられることは奇跡にも近くなってきていて、ただただずっと祈るばかりでした。

気をつけても気をつけても、あらゆる力によって、それが叶わなかった様々な公演を多く目にしてきたので、やはり奇跡としか言えません。

こんなことが奇跡であっていいのかい、と同時に思ってもいます。

それでも、受け取ったたくさんの想いやお力に、素直に感謝しています。


SNSでいただいたご感想、見つけられる限り、拝読いたしました。

パンフレットを読みながらも思っていたのですが、同じ作品を通しても、いろいろな視座があって、いろいろなことを感じていて、
ご感想を読んで、作品をまた多面的に認識することができました。

初日に、客席にお客さんが「いる」ことの大きさをよく実感した話をしましたが
4日の夜に無観客収録を経験して「いない」ということを驚くほど深く知り、そのピースの大きさを感じました。

まるで波が寄せたり引いたりするように、客席の呼吸があったような気がします。

言葉としての感想でなくても、そこにそうしていてくださったことを、大切な言葉のように受け取る毎日でした。

共感が正しさなんじゃなくって、
それぞれに想いがありながら、いまここで描かれていることを共有しようとする協力があるって、かけがえのないことだと思います。

違う人たちが、同じ場所に集い、同じものを見ようとする、そしてまた違う場所へ帰っていく
劇場の形をあらためて知ることができて、本当によかったです。

収録された映像には、また別の、そこにしかない静寂が映っているのだろうと想像します。

配信で観たいかた、配信でしか観られないかた、
もう一度静かに一人で観たいかた、

観たいと思ってくださるかたに、できるだけ多く、届いたらいいなと思っています。

配信映像は7月15日(木)〜8月13日(金)まで販売、
7月24日(土)から配信開始でご視聴いただけます。
詳しくは、こちらをご覧ください。

『夜会行』映像配信について


鵺的『夜会行』のスタッフ・キャストクレジットは、こちらをお読みください。

キャストの今後の予定はこちらからどうぞ。

文庫版の戯曲はこちらでご購入いただけます。


千秋楽に撮影した、集合写真。


こんな人々で作っていました。もっとたくさんの人がいてくれました。

それぞれに、自分の歴史や生活や言葉を持ちながら、戯曲の言葉をしっかりと届けようとしている人たちが集まったチームだと恐れ多くも感じています。

それぞれの覚悟と、そこから生まれる優しさに、たくさん救われました。

傷ついた、傷つけたとか、
加害者、被害者で区切らず、
そこで対話や思考を終わりにせず、
相手と自分の思いや、それが生まれてきた経路を紐解いていくことの大切さを、本作を通じてずっと思っていました。

「傷ついた」「傷つけた」と自覚することの大切さも同時に思いました。

こんがらがった鎖を、息を整えて解くように
紐解いて、紐解いた結果
根っこがもともと、ねじれた造形だった!みたいなどうしようもなさも、たくさん感じながら毎日舞台に立ちました。

あ、困った、この文章の行き着く先がなくなってきました。

それでも今日も、ご飯が美味しくて、眠るのが気持ちよくて、お風呂が気持ちよくて、会いたい人に会いたくて、
世界はめまいがするほど複雑だけど、そばにある小さなものにどうしようもなく感謝したりしていて
それは矛盾しながら、共存し続けるものなんだろうと思っています。

もっとわかりやすかったら、こんなに疲れないんだろうけど
多分知らぬところで、このわけのわからなさに助けられてもいるんだろうな。



千秋楽から一夜あけて、
昨日は、「結婚の自由をすべての人に」の訴訟を東京地裁で傍聴してきました。

youtubeの報告会で内容を知ることができます。

あらためて、あまりにも当然持っているべき権利を願っているだけなのだと思いました。

結婚が全てではないと思えるのは選択の自由があってこそで、
現行法が婚姻によって与えている様々な権利はやっぱりとても重要なものです。

ただそれが同性であるというだけで、例えば、深く永く関わったパートナーの命の局面でそばにいられない可能性のある現状は、1日も早く変わってほしいです。

また、法律が同性間の婚姻を認めていないということが、
「それが普通ではない」、「正しくない」ことだと世間に認識させる働きをしてしまっているという弁護士のかたの陳述がありました。

その通りだと思いました。

ただ当たり前の権利を、当たり前の生活を守れる社会にしていきたいし
そのためにまず、今は、これまで無視されてきた存在を可視化できるように努めていく必要を感じました。

また、配信の期間が終わる頃に、書こうと思います。


長くなってしまいました。

この作品を想ってくださるかたの生活が、健やかで優しいものであり続けることを、心から願っています。

そのかたの大切な人も、そのまた先の大切な人も(つまりできればみんな)。

人生って悪くないなと思える日が、時々(できればたくさん!)あるといいですよね。

私はさっき、友人のとても嬉しい報告を受け取って、道端で感動しました。

また会える日まで、どうかお元気でいてください。

ありがとうございました。

Happy pride!