蝉と弾

写真 DAISUKE HASHIHARA


今日、買い物へ行くのに街中を歩いていたら
すぐそばに、2人組が歩いていた。

「今日お誕生日ですよね」
「え、良く覚えてたね」

という会話が聞こえてくるではないか。

袖振り合うもなんとやら
いますぐ祝いたい!
という衝動に駆られた瞬間

わたしの足元にいたらしい蝉が、
わたしの一歩にびっくりして飛び上がって
二人のもとにお見舞いしてしまった。

じじじじじ!
ぎゃー!!!!

というクラッカーのような盛り上がりを聞いて
爆笑するわたし、そしてふたり。

「ごめんなさい、わたしのせいです〜」と謝りながら
ちょっとだけ、二人と交わった。

本当はおめでとうございます!と言いたい気持ちを、盗み聞きしてしまった後ろめたさから堪えて
後手でありったけの祝意をなげて去った。

「30ですか?」
「30。30日で31」
「あ、31ですか」
「31だよー人生ってあっという間だよー」

と言っているのが聞こえた。

蝉のあっというまの人生も
ひとのあっというまの人生も
くらべようもないよな、と思った。

おめでとう。おめでとう。

すれ違いざまに出逢って弾けるものに
生きていることを感じました。