たけだけしいもの

とても眠たいけれど、どうしても動かなくてはならなくて、家を出た。

駅までの道に、黒とオレンジのイモムシがいた。

鮮やかな色で、これは良く見つかる。

踏みつぶされないように出来ているんだろうか、自然はすごいなあと思った。 



歩いていると、右足が出るときに左手が前に振れるのはとても自然なことで、力のひとつもかかっていないのだなあと気がつく。

当たり前のことなんだけど、へえと思う。

わたしはルーズショルダーというものらしく、肩に力を入れていないと、肩の骨がちょっとずれてしまって痛いことになる。

だから、普段歩くときも力を抜いて腕を振ることはあんまりできなくて

たいてい少し力を入れているか、おばけの手の形をしている。
(今度は手首の関節がずれるから不便) 



そんなことを考えて駅にたどり着いたら、お財布を持っていないことに気がついた。

がーん、である。

ただでさえ眠たかったので、がーんであることをあんまり考えないようにしてきた道を戻る。

さっきと同じ景色だなあと思いながら、家まで辿り着き、財布を持って家を出る。

すると、さっき出会った、黒とオレンジのイモムシが、道の真ん中で死んでいた。

潰されてしまったようだった。

胸の中に冷えた感触が広がって、悲しいのだなあと思った。

さっき生きていたものが、死んでいる。

でも、さっき生きていたところに出会ったから、胸の中が冷えたのだと思う。



いつも出かける喫茶店の本日のケーキが、ミルクレープであることを願っている。