ほしいまま
ああ、上善如水、だなあ、というか
世に言われる常識とか、言葉だけで仕入れた知識なんかよりも
そのものが、そうあるように、あるということが
なによりもたいせつだよなあ、とおもっていた。
そんなことをおもいかえしながら、
いちにちのおわりに電車に揺られていたら
目線の先に、夏に出会った少年を見つけた。
その少年は、私とまるきり誕生日が同じで
そのことで、夏にひと盛り上がりをした。
声をかけることに1分ほどまよったけれど
今声をかけないと二度と会えないかもしれないし
なんだかそういうことのような気がして
立ち上がって声をかけた。
その瞬間、遠くに座っていた少年の他人の顔が
ぱあっと顔見知りの顔に変わって
ああ、声をかけて、ほんとうによかったとおもった。
わたしたちは、目一杯の誕生日前祝いとして
たがいに盛大な拍手を送ってわかれた。
きっとまた会えると思う。
今日は、三日月に金星がとっても近づく夜で
ほしのめぐりを、うんとかんじた。
ずっとよい日々を暮らすって
まいにちたゆまぬ努力をしつづけることじゃなくって
どんなにとびきりの幸せが舞い降りても
どんなにどん底に突き落とされても
このおだやかなしあわせを力強くまもってゆこうとする
そういうことなんじゃないかなあと
なんとなく、かんじた。