みちをゆく

きょうみた夢は、行ったことのないまちへの旅だった。

たぶんまだ、ほとんど誰も行ったことないまち。

「空路じゃなくて、地下道でゆけるんです」

そういわれて、階段を降りて

しばらく真っ暗な世界を抜けたら

そこはしらないまちだった。

ちいさな浜辺があって、うみがみえて

うみのむこうがどこなのかはわからなかった。

浜辺には、古い建物が建っている。

それなりに歴史のあるまちなんだなあ。きっと。

中に入ると、先進的なショッピングモールで、タピオカミルクティーが流行ってた。

アジアなのだとおもう。

ひろーくて綺麗なショッピングモールは、中はガラガラで、入っている店舗もまだまだすくなかった。

おわったまちなのか、これからのまちなのか、
ちょっとわからない。

ショッピングモールを抜けて、浜辺と反対側に出ると

古い建物のならぶ、まちなみがあった。

足元は石造りで、建て物は煉瓦造り。

とてもすきな景色だった。

わたしはどこかへ急いでいて、時間がなくって

果たさなきゃいけないことがあったはずなのに、そのまちをでなくてはならなくて

わるあがきの10分をすごしに、目の前にあった喫茶店にはいった。

とてもいい名前のお店だったのだけど、わすれてしまった。

店を開けるとちいさなテーブル席がいくつかと、ひろーいカウンター席があって

カウンターのなかには、7人ほどの従業員がいた。

彼らは家族なのだなということは、皮膚やことばの距離感で瞬時にわかった。

そこはハムサンドが名物だったのだけど、時間がなくってすぐでそうなメロンソーダを頭に浮かべた

のに、口から出た注文は「アイスコーヒーを」だった。

わたしって、こういうところだよなあ、とおもった。

ごくふつうのくびれたグラスの中から、ストローで、すごい勢いでアイスコーヒーを吸い上げると

わたしはかぜのように店を出た。

帰り道。

動く歩道のようなものに乗る。
後ろ髪が、重たいくらいに感じられる。

ふとみると、わたしの右手には包装されたちいさなカメラがあって

そうだ、これをわたしは、誰かに渡したくって

この胸の中の空間には、誰かに渡さなきゃいけなかったことばがあって

その誰かに、会いに来たんだった。

誰か。

その瞬間、わたしはちゃんと、おもいだしていた。

それでも動く歩道のうえを、ベルトコンベヤーをながれるダンボール箱みたいにわたしは進んで

きっとこのまま、知ってるまちへ、かえる。

やっぱりわたしって、こういうところだよなあ、と、おもいながら。