ピンクとブルー

あ、とおくへいこう

と23時に思い立ち、飛行機をとった。

北海道行き。

いやいや、でもホテルとれないかもしれないわよ

と探したら、そっこう良い宿が取れた。

よって、翌朝

北海道へ旅立った。

旅行はリュックひとつで行くと決めてる。

身軽になるために行っているのに

重装備はほんまつてんとうむし。

「北海道すげー雪なので滑らないように」

という友の助言に、ようやっとそのことを思い出し

長靴を荷物に追加したので

さあ、持っていけるものは限られた。

リュックの8割を占める長靴と

クレヨンと、画用紙と、

カメラと

パソコンを持っていくかギリギリまで悩んで

いや、休みに行っているのに

仕事のことは考えたらほんまつてんとうむし再来

とおもって、友から借りた本を入れた。

出発前の空港では
納豆巻きを食べた。

目の前に座っている人は長崎ちゃんぽんを食べていた。

なるべく日常的な、土地柄を感じないものが食べたかった。

とおくへいく、を、引き立てたかった。

飛行機の旅は1時間半。

ちょうど日が沈む頃に乗ったので

窓の外は、太陽と月の混ざった
ピンクみたいなブルーみたいなのが染めた後

まっかにつつまれた。

雲の上で見る、こういう時間の空の色はうそみたいで

むかしみてたNHKの「おはなしのくに」の
おはなしをするそのうしろの壁を照らす
きれいな照明を思い出した。

飛行機の中で、本を読んだ。

本の中にあった言葉の色味のせいなのか
景色のせいなのか
ピンクみたいなブルーが見えた。

痛みと愛の間をさまようはなしだった。

遠い国の少女の言葉が
遠い国の香りを放ちながらも
とてもちかくかんじて
遠い国に見つけた友達みたいだと思った。

最後の章を残して、飛行機は北海道へ降り立った。

飛行機から出た瞬間の空気はしゃっこくて
とても爽快だった。

うまい、ってかんじ。

バスに乗って、新千歳空港から札幌市内へ向かった。

途中、月寒というバス停を通って
とてもいい名前だなと思った。

友人の言った通り
窓の外には雪景色が広がっていた。

それではじめて

ああ、おもえばわたし
北海道ってはじめてだわと気がついた。

去年頃からずっと行きたかったのだけど
逃し続けていた。

とくにわけはなくて
でもゆかりはいちおうある。

母は北海道うまれ。

写真で、雪景色の中かわいいニットの耳当て帽をかぶっている母姉妹をみた。

くらい。

目的もない。

たいていわたしの旅は

とおくへいきたい

それだけ。

行くことが目的、という
進路指導だったら怒られそうな発想なので

やることは着いてからきめる。